コラム
第18回 セ・パ序盤戦、QS率から見るチーム状況診断

 誰の言葉かは定かではありませんが『野球(の勝敗)は投手で8割が決まる』という格言めいた言葉が昔からありますね。近代野球の実情に照らした際の真偽の確認は横に置いても、先発投手の出来がその日のチームの勝敗に大きな影響を与えているのは、今も変わらない実情ではないでしょうか。

 今回のSDSは、5カード目を終え同一リーグ内の対戦が一回りしたこの時点で、各チームの投手陣、特に先発投手が、どのような結果を残し前半戦のチームの状況にどのような影響をもたらしているのかを確認していこうと思います。

 今回掲載する分析図は、4月18日までの全ての試合におけるQS及びHQSの記録となります。黄色はQS(Quality Start:6イニング以上の投球、且つ自責点3以内)、水色はHQS(High Quality Start:7イニング以上の投球、且つ自責点2以内)を表しています。(灰色は試合なし)
 QS率の良し悪しが単純にチームの順位とリンクするわけではありませんが、色々とチーム事情が透けてみえてきます。各チームの状況を眺めてみましょう。

 先ずはセ・リーグから。

4/18現在
 3月4月
試合防御率QS率16年
QS率
311245678911121314151618
広 島163.0469%62%                                                
阪 神143.2536%61%                      -    -                  
巨 人153.1867%57%                      -                        
DeNA153.8247%54%                            -                  
ヤクルト153.2680%41%                            -                  
中日153.4360%52%                            -                  


■広 島
 開幕2戦目からの10連勝もあり現在首位です。QS率 69%(リーグ2位)、チーム防御率 3.04(リーグ1位)。打線の好調も大きな要因ではありますが、投手陣の好調ぶりがそのまま順位に反映している感じです。開幕前、黒田博樹の引退により投手力の低下が心配され、開幕をすると昨季の沢村賞ジョンソンが開幕戦の登板以降、体調不良により登録を抹消されてしまったことの影響を感じさせない成績です。現在のローテーション投手は6人全員が20代となり、その内、床田寛樹と加藤拓也はともに昨年入団の新人選手です。若さを武器に昨年のように走り抜けられるか? ここから非常に興味深いですね。


■阪神
 前述広島とは対照的です。分析図の通り、QS率は3割台と中々試合を作りきれていない状況が見て取れます。幸いにも、二番手投手以降の救援防御率が1.98(リーグ1位)の数字を残しており、FA入団の糸井嘉男を中心とした打線の好調も相まっての現在の順位となっております。先発投手の柱としての活躍を求められている藤浪晋太郎が16日にインフルエンザに罹患し登録を抹消されました。順位は2位ながらも見通しはまだとても楽観できる状況ではないようですね。


■巨人
 開幕4連勝と幸先の良いスタートを切りましたが、昨年同様に早々に失速してしまいました。先発投手陣全体ではQS率 69%(リーグ3位)とまずまずながらもローテーション5番目6番目の投手とリリーフ投手陣が不安定な状況にあり、この順位にいるという感じでしょうか。救援防御率は3.09とそれ程悪くないながらここ一番で山口鉄也、森福允彦、カミネロの救援陣が不安定さを見せています。先発投手、打線は悪くないだけに早期の救援陣の安定化が今後の課題のようです。


■DeNA
 セ・リーグで唯一、開幕戦から6人の先発投手だけでキレイに規則的なローテーション回しを行っています。しかし、QS率は47%(リーグ5位)で先発投手に勝ち星がついたのは、クラインの2勝と 濵口の1勝のみという状況にあり、チーム防御率は3.82(リーグワースト) 、救援防御率は更に悪く4.32(リーグワースト)とチームの浮上には先発・救援陣共に早急な立て直しが必要な状況です。


■ヤクルト
 非常にわかりやすく数字にあらわれています。チーム防御率は、3.26(リーグ2位)、QS率は脅威の80%(リーグ1位)の成績を残しながらも、救援防御率が3.89(リーグ5位)と非常に良くありません。低迷する打線と救援投手陣が原因となり、試合後半の競り合いに敗け試合を落としてしまう展開が目立っています。開幕前より投手陣の層の薄さを指摘されていました。シーズン中の立て直しは叶うでしょうか?監督の采配に注目です。


■中日
 チーム順位が示す通り、最も苦しい台所状況にあります。12球団で唯一、先発投手に勝ち星がない状況が今だに続いています。QS率は60%(リーグ2位)と高い値を出していますが、フタを空けてチームの内実を確認すると投手陣のやりくりに大変苦心している状況が見えてきます。開幕投手のエース 大野雄大と肩に不安のある元エース 吉見一起の二人は中6日で回すも、若松駿太やバルデスは中3~5日の登板間隔でローテーションに組み込むなど、非常に不規則な先発投手のやりくりを行っています。遂には4月12日には入団から昨年まで3年連続で60試合登板を果たしていた救援投手陣の中心 又吉克樹をプロ入り後初となる先発起用まで行いました。長く続けることが難しい短期決戦を思わせる起用法が続いています。この苦境脱出には、昨年11月に左肘の手術を行った小笠原慎之介の早期復帰など、あらたな戦力の登場が必須のようです。


 続いてパ・リーグです。
 昨季のAクラスとBクラスが完全に入れ替わるという面白いシーズン序盤の展開となっています。

4/18現在
 3月4月
試合防御率QS率16年
QS率
311245678911121314151618
楽 天133.6846%54%                   -       -    -            
オリックス142.8171%49%                -                         -   
西 武122.5069%45%                -          -    -            
ソフトバンク153.7733%64%                                           -   
ロッテ154.7440%56%                   -                           
日本ハム163.5431%55%                                                


■楽天
 QS率から垣間見える先発投手力とチーム順位の相関を完全に否定するようなチーム成績となっています。(笑)分析図からもわかる通り、
 ・HQSを記録した先発投手は12球団で唯一ゼロ
 ・QS率もリーグ3位(46%)
 ・チーム防御率 リーグ4位(3.68)
と先発投手陣は不安定さを露呈している状況にあります。ではなぜ現在の順位にいるのか?
 好調な茂木、ペゲーロの1、2番が牽引する打線と救援投手陣の踏ん張りが大きいですね。昨季入団の新人 森原康平は、登板10試合 防御率0.00、新外国人 ハーマンは、登板9試合で防御率1.08、抑えのエース松井裕樹も登板10試合で防御率0.00と無失点を継続中と試合の後半に大きな安定をもたらしています。現在不調に喘いでいる先発の柱、則本昂大、岸孝之の両輪が早々に復調できればシーズン前に低かった下馬評を大きく覆すこともあるかもしれませんね。


■オリックス
 昨季は完全最下位(オープン戦、交流戦、ペナント、二軍)という不名誉な成績で終わったシーズンでした。開幕後も3連敗スタートとなり、「今年もか、、」の空気を一瞬漂わせましたが、4戦目から一気の4連勝で借金を一気に完済し、3年ぶりの貯金生活に入るという盛り返しを見せています。T-岡田を中心とする打線の好調もさることながら、この盛り返しの最大の要因は、先発投手の安定にあります。QS率71%(リーグ1位)、チーム防御率 2.81(リーグ2位)、HQS率にいたっては42%という高い数字です。個別の選手を上げると、現在、パ防御率ベスト5に入っている西勇輝、金子千尋、松葉貴大の3人の先発投手ということになるでしょう。先発投手陣の安定がこのままは続けられれば、昨年の屈辱を晴らすことも可能かもしれません。


■西武
 チーム防御率は2.50(リーグ1位)と非常に良い数字を残しております。QS率69%と好調の先発組で目を引くのがブライアン・ウルフで、登板試合ですべて勝ち3勝無敗。
 他の先発組の菊池雄星、野上亮磨もまだ1勝ながらもしっかり試合はつくっています。
 救援防御率は1.47(リーグ1位)とが大きく目を引きます。5試合以上に登板し防御率0.00の投手が武隈祥太、大石達也、牧田和久、シュリッターの4名、抑えを担う増田達至も防御率1.80と盤石の救援陣となっております。
 あとは多和田、髙橋光の「裏ローテ組」次第でしょうか。


■ソフトバンク
 ここまでのQS率は33%(リーグ5位)です。因みに昨季はリーグトップの64%でした。まだシーズン序盤とはいえ不調に陥っています。不調の先発投手陣の状況をもう少し掘り下げると、総失点数が57。うち、実に14点が初回の失点です。イニング別失点で最多となっています。つまり試合開始と同時にビハインドを背負いながらゲームを進めることが多くなっているということですね。盤石かつ層が厚いと評された先発投手陣も、和田毅の左肘違和感による登板回避、エース武田翔太の肩の違和感による登録抹消と左右のエースを失い非常に苦しい台所事情となってしまいました。厚い選手層を活用しここからどのような先発投手陣の立て直しを図るのでしょうか。


■ロッテ
 QS率は40%(リーグ4位)と昨年の56%から大幅にダウンしている状況です。そして防御率も12球団ワーストの4.74(先発防御率4.80、救援防御率4.65ともにワースト)となっております。まさに投壊の様相を呈しています。何よりも痛手なのが涌井秀章と並ぶ柱であり昨季の最優秀防御率賞を獲得した石川歩が18日に不振を理由に2軍落ちしたことです。WBC後遺症でしょうか?昨季の首位打者のタイトルを獲得した打の中心 角中勝也も故障により出場選手登録を抹消されており、開幕1ヶ月目にして早くも正念場を迎えている状況です。まだ序盤ですが投打ともに立て直しが急務な状況です。


■日本ハム
 QS率は31%(リーグ6位)と、昨年の55%から大幅にダウンし、チーム防御率も3.54(リーグ5位)となっており、不調の投手陣と4番の中田翔が故障で2軍落ちし迫力を欠いている打線が相まって現在の順位となってしまっているようです。そして最大のポイントは打線迫力不足と不調の投手陣、いずれにも大きな影響を与えているのが二刀流の大谷翔平の故障による2軍落ちです。今回、あらためて二刀流 大谷翔平に過度に依存度していたチームであることが露呈してしまった感じでしょうか。中田翔と大谷翔平の早期復帰が今後のカギになりそうです。

2017.04.21
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